日本遺伝子診療学会誌
Online ISSN : 2759-6060
報告
ELSI委員会企画 遺伝学的検査の実名での実施に向けた現状と課題
岡崎 哲也別府 弘規糸賀 栄山口 敏和有田 美和横井 左奈相澤 弥生德富 智明中國 正祥西田 美和藤田 和博山田 崇弘渡邉 淳
著者情報
ジャーナル フリー

2025 年 2 巻 1 号 p. 42-45

詳細
抄録

2022年3月に改定された日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」(以下ガイドライン)において、遺伝学的検査の匿名化が“必須ではない”ことが示された。このことを受け、2024年9月に開催された第31回日本遺伝子診療学会大会内で、同学会ELSI委員会企画として遺伝学的検査の実名実施に向けた現状と課題に関し、委員からの発表ならびに総合討論を行った。ガイドライン改定の背景の記載にあるように、医療安全の観点から匿名での遺伝学的検査実施による取り違えのリスクや、家系員が他施設で遺伝学的検査を実施する際の本人確認の課題といった内容が共有された。遺伝学的検査以外の検体検査を取り扱っている登録衛生検査所では、実名の取り扱い体制を既に有していることが示された。当委員会委員が所属する医療機関で既に実名での遺伝学的検査を実施している施設があった一方で、実名での遺伝学的検査実施に向けた取り組みがこれからという医療機関もあった。今回の学会企画の内容から、現在はガイドライン改定後の過渡期にあることが示された。今後、それぞれの登録衛生検査所及び医療機関が、遺伝情報の特性に留意しつつ現場の実情に即した運用体制を構築していくことが望まれる。

著者関連情報
© 2025 日本遺伝子診療学会
前の記事 次の記事
feedback
Top