2022 年 40 巻 3 号 p. 195-201
妊娠中に子宮頸部に発生する神経内分泌腫瘍の報告は少なく,一定の治療指針がない.妊娠21週に診断した子宮頸部神経内分泌腫瘍の1例を経験した.29歳1産.妊娠21週に子宮腟部に20 mm大のポリープ状腫瘤を認め,組織診で子宮頸癌と診断され紹介となった.組織診は神経内分泌腫瘍,腫瘍径は15 mmで双合診から子宮頸癌IB1期と診断した.腫瘍径と画像診断でリンパ節転移を認めないことから,患者・家族,産婦人科・小児科医で協議し,児の胎外生存可能な妊娠26週まで待機する方針とした.しかし,妊娠24週2日に腟から突出するほど急激に腫瘍が増大したため,緊急帝王切開術,広汎子宮全摘出術を施行した.児は577 gで発育は良好であった.組織診は小細胞癌で,閉鎖リンパ節転移を認めた(pT1b2N1M0).術後にPE(cisplatin,etoposide)療法を4サイクル施行するも,術後5カ月で骨盤内と肝臓に転移し,治療後10カ月で永眠した.子宮頸部神経内分泌腫瘍は進行が速く,妊娠中に診断した場合は妊娠週数,児の影響を考慮し,より慎重な方針決定が必要である.