日本婦人科腫瘍学会雑誌
Online ISSN : 2436-8156
Print ISSN : 1347-8559
症例報告
完全切除不能な低異型度子宮内膜間質肉腫の残存病変に対してアロマターゼ阻害薬が著効した1例
岩崎 一憲伊藤 敏谷松家 まどか安立 匡志柴田 俊章村上 浩雄安部 正和
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2022 年 40 巻 3 号 p. 188-194

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抄録

LGESS(low-grade endometrial stromal sarcoma)は子宮体部悪性腫瘍の0.2%に発生する非常に稀な疾患である.進行・再発症例に対して殺細胞性抗がん剤は効果が乏しく,高用量メドロキシプロゲステロンやアロマターゼ阻害薬といったホルモン療法が推奨されている.症例は45歳,2妊2産.左下腹部痛を主訴に近医婦人科を受診,Douglas窩腫瘤を指摘された.審査腹腔鏡でDouglas窩と腹腔内に播種病変を認めた.播種生検の病理診断はLGESSで,治療目的で当院に紹介された.下部消化管内視鏡検査で直腸粘膜浸潤を認め,LGESS IVB期(cT4N0M1)と診断し,可及的腫瘍減量術(子宮全摘,両側付属器切除,大網部分切除,回盲部切除,回腸-上行結腸吻合,直腸およびS状結腸切除術(ハルトマン手術))を施行した.病理診断はLGESS(pT4NXM1,脈管浸潤陽性,切除断端陽性)であった.残存病変に対して術後アロマターゼ阻害薬を投与し,術後1年2カ月時点で進行・再発を認めていない.LGESSに対するアロマターゼ阻害薬は,2021年10月に本邦でも適応外使用が新たに認められ,治療選択肢の一つとして検討するべきである.

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© 2022 日本婦人科腫瘍学会
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