2024 年 42 巻 4 号 p. 310-315
概要:停留卵巣は発生率0.3~2%とされる稀な疾患である.停留卵巣から発生したと考えられた卵巣類内膜癌の1例を報告する.症例は49歳女性,未経妊.他院で9年前に虫垂腫瘍の疑いで手術を行い,術中に7 cm大の後腹膜腔内の卵巣腫瘍と判明したが,アナフィラキシーショックの疑いで手術継続困難となり,摘出すること無く終了した.その後MRIで卵巣チョコレート嚢胞の疑いとなり,ジエノゲスト内服で9年間経過観察されていた.右下腹部痛と発熱を主訴に当院を救急受診し,CTで右側後腹膜腔内に14 cm大の腫瘤を認めた.CTの3D構築画像で腫瘍の支配血管は卵巣として矛盾なく,過去のMRIと比較して腫瘍内の不整な隆起を認め,腫瘍マーカーの上昇もありチョコレート嚢胞の癌化を疑った.CT所見から虫垂炎・虫垂膿瘍の合併も疑い抗生剤治療を開始し,手術を施行した.回盲部周囲は膿瘍を形成し腫瘍と癒着し,腫瘍の浸潤も考慮し,結腸右半切除を施行し腫瘍と一塊切除した.術後病理診断は卵巣類内膜癌IA期であった.停留卵巣の悪性腫瘍の報告は少なく,さらなる蓄積が望まれる.