日本婦人科腫瘍学会雑誌
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ワークショップ3
子宮体癌分子分類の治療薬探索における役割
三田村 卓五十嵐 冬華櫻井 愛美松宮 寛子山崎 博之黒須 博之遠藤 大介井平 圭金野 陽輔渡利 英道
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2025 年 43 巻 2 号 p. 36-41

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抄録

概要:【背景】

子宮体癌患者の予後は腫瘍の遺伝子学的背景により異なるため,分子分類の導入が提案されている.一方,実臨床において分子分類が治療薬探索に役立つかどうかは不明である.

【方法】

標準治療実施中か終了後に増悪したためがんゲノムプロファイリング検査を受けた患者19人を対象とし,TCGA分類に準じた分子分類を試みた(POLE群;POLE遺伝子pathogenic variantあり,MSI群;POLE群以外のMSI/TMB-high,Copy-number high(CNH)群;MSI群に該当しない,かつTP53遺伝子pathogenic variantあり,Copy-number low(CNL);前3群に該当しない).分子分類に基づく治療の推奨や提案ができたかどうかを調査した.

【結果】

患者数の分布は,POLE 0人,MSI 4人,CNH 17人,CNL 20人であり,CNH/CNLの割合が90.2%であった.CNH/CNL群では,actionable遺伝子変化に基づく推奨治療を示すことができた患者はいなかった.また遺伝子変化に関連する何らかの臨床試験情報が見つかった患者の割合は,CNL群で70.6%(KRASPTENPIK3CANF1FBXW7FGFR2ARID1ACDKN2AMTAP),CNH群で55.0%(TP53PTENERBB2BRCA1KRASFGFR1NF1)であったが,実施されたのはERBB2HER2)増幅に対して抗HER2抗体の投与を受けたCNH群患者1人のみであった.

【結論】

分子分類は,子宮体癌患者のための治療薬探索に関してまだ有用性が低い.今後は,受け皿となる新規治療の開発が一層望まれる.

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