日本婦人科腫瘍学会雑誌
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症例報告
卵管原発上衣腫の1例
萩原 聖子加来 恒壽
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2025 年 43 巻 2 号 p. 52-57

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抄録

概要:上衣腫は脳室や脊髄中心管を被覆する上衣細胞から発生するが,稀に中枢神経系(Central nerve system:CNS)以外にも発生する.婦人科領域では卵巣上衣腫の報告が多く,卵管原発例はこれまでに報告されていない.われわれは子宮腺筋症と卵巣子宮内膜症性嚢胞に対し腹腔鏡手術を施行し,病理組織検査で偶然発見された左卵管原発上衣腫の1例を経験したので報告する.症例は42歳,1経妊1経産.腹腔鏡下子宮全摘出術+両側付属器摘出術を施行し,病理組織検査で左卵管膨大部の内腔に血管周囲偽ロゼット,上衣ロゼットを有する径9 mmの腫瘍性病変を認めた.免疫組織化学染色でGFAP,EMA,CK7,PAX-8,WT1,エストロゲンおよびプロゲステロンレセプターが陽性であった.S-100,CK20,CD10およびp53は陰性であった.以上の所見に加え,脳MRI検査およびFDG-PET CT検査で他の腫瘍性病変を認めず,卵管原発上衣腫と判断した.現在術後11年経過し,再発徴候は認めていない.CNS外上衣腫はロゼット構造の他に多彩な組織構造を認め,診断が困難な症例もあるが,GFAP陽性像は診断に有用である.

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© 2025 日本婦人科腫瘍学会
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