日本婦人科腫瘍学会雑誌
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症例報告
卵巣腫瘍との鑑別を要し,術後病理検査で診断された低異型度虫垂粘液性腫瘍と虫垂子宮内膜症を合併した1例
池田 裕一郎寺田 貴武清家 崇史朴 鐘明木村 芳三杉山 徹
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2025 年 43 巻 2 号 p. 58-64

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抄録

概要:今回我々は卵巣腫瘍との鑑別を要し,術後病理検査で診断された低異型度虫垂粘液性腫瘍(Low-grade appendiceal mucinous neoplasm)と虫垂子宮内膜症を合併した1例を経験した.症例は43歳,1妊1産.便秘と下腹部痛を主訴に近医消化器内科を受診した.緩下剤で症状が改善せず造影CT検査を施行し,右卵巣子宮内膜症性嚢胞の破裂が疑われた.当院へ搬送され,入院管理となり骨盤部造影MRI検査を施行したところ,悪性腫瘍の除外が困難な右卵巣腫瘍の破裂の疑いと診断された.当科入院時の血液検査で炎症反応の上昇を認め抗菌薬治療後に待機的に開腹手術を施行した.腹腔内所見はチョコレート様の子宮内膜症成分と黄土色のゼリー状腹水が混在していた.両側付属器は正常で,虫垂先端が穿孔していたため穿孔性虫垂炎と判断し虫垂切除術を施行した.術後病理の結果,低異型度虫垂粘液性腫瘍と虫垂子宮内膜症の診断であった.出血を伴った子宮付属器周囲の腫瘍破裂が疑われる場合,卵巣腫瘍破裂だけではなく低異型度虫垂粘液性腫瘍または虫垂子宮内膜症の穿孔も念頭におく必要がある.若干の文献的考察を含め報告する.

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