2026 年 44 巻 2 号 p. 24-34
概要:急速な高齢化に伴い,婦人科がん治療において,実年齢よりも患者の「虚弱性」に基づいた個別化医療の重要性が増している.虚弱性は,過剰治療や過少治療を防ぎ,術後合併症や死亡率,機能的予後を予測するための独立した危険因子である.本稿では,高齢者機能評価(CGA)や簡易スクリーニング法の現状を概説するとともに,術中評価指標であるSurgical Apgar Score(SAS)の有用性について論じた.自験例を含む単施設および多施設共同研究の結果,SASは術後合併症および1年死亡率の有意な予測因子であることが示された.しかし,SASは術中指標であるため,手術実施前の治療方針決定には限界がある.既存の術前予測モデルは,虚弱性の定義や評価法の不統一といった課題を抱えており,臨床応用には至っていない.今後は,標準化された虚弱性評価を組み込んだ精度の高い術前予測モデルの確立が急務であり,それに基づく適切な治療強度の設定が,高齢がん患者のQOL維持と生命予後改善の両立に不可欠である.