2026 年 44 巻 2 号 p. 70-75
概要:本研究では,われわれがこれまでに予後不良因子として見出してきたp53細胞質陽性症例を含むp53染色パターンに着目し,病理AIを用いてその分類を自動化・定量化することで,卵巣癌および子宮体癌における迅速かつ客観的なリスク層別化を可能とすることを目的とした.卵巣漿液性癌および高異型度子宮体癌症例のp53免疫染色バーチャルスライドを用い,腫瘍領域を微小タイル化した後,p53野生型・null型・核過剰発現型・細胞質陽性型の4群に分類し,それぞれのタイルにおけるp53染色パターンを深層学習させ,p53病理AI予測モデルを構築した.卵巣癌12例由来の約32,000枚のタイル画像を用いて学習を行った結果,99.5%の精度を有する予測モデルが構築された.本モデルを用いて別コホート150例を解析したところ,病理専門医との診断一致率は96%であり,特に野生型/null群と核過剰発現・細胞質陽性群の鑑別率は100%であった.さらに,HE染色標本から分子サブタイプ解析を行った結果,予後不良とされるMesenchymal Transition型がp53細胞質陽性群に最も高頻度に認められた.子宮体癌においても同様のAIモデルを構築し,高い診断一致率と再現性が確認された.以上より,病理AIを用いたp53染色パターンの自動分類は,高い精度と汎用性を有し,従来主観的であったp53評価を標準化・定量化する有用な手法であることが示された.本手法は,今後の分子分類や腫瘍微小環境解析,さらにはp53細胞質陽性症例に着目した婦人科癌のリスク層別化に貢献する可能性が示唆された.