2024 年 7 巻 4 号 p. 69-76
「日本版抗コリン薬リスクスケール」が日本老年薬学会より発表され,薬剤の持つ抗コリン作用に改めて注目が集まっている.高齢者においては抗コリン負荷の増大は,老年症候群の発症を増長したり,認知機能障害に関連するなど,ポリファーマシー問題とも関係して注意しなくてはならない.抗コリン作用は必ずしもムスカリン受容体への結合と拮抗作用のみではなく,さまざまな作用の複合として誘導される.本稿では,in vitroでのムスカリン受容体への結合活性を基に作成された「山田分類」と「日本版抗コリン薬リスクスケール」との間で差異のある薬剤に注目し,抗コリン作用を改めて考え直し,受容体の直接拮抗作用ではない「抗コリン様作用」についても改めて注意喚起したい.