図学研究
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研究論文
彫刻における立体概念の形成
福江 良純
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2010 年 44 巻 1 号 p. 3-12

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抄録
彫刻とは,材料の素材が持つ3次元の立体性を本質的な形式とする芸術である.しかし,彫刻が3次元であるという自明の事実と,彫刻を立体として捉えるということは同一ではない.そこには,平面において奥行き概念を獲得する絵画空間にも似た,立体認識の特異な仕組みがある.ただし,立体概念とは単なる知覚以上の内容を意味し,感性上の現象であるという点で主観的な認識と言える.だが,それは2次元の平面に投影された線の認識を必要とし,それを手掛かりにとすることで技術的に検証が可能である.ただし,彫刻における線の意味は,所与の実体である材料に対する操作を直接導く理念の現れでもあり,そこに彫刻の独自性がある.つまり,彫刻の立体概念には,単なる形状とは別種の,制作過程,素材の物性といった複合的要因が密接に関係しているのである.
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© 2010 日本図学会
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