抄録
ドイツ語圏における透視図法の黎明は,16世紀の南ドイツ
で活躍したクラフツマンたちの功績まで遡ることができ
る.15世紀のイタリアで芸術家や建築家により用いられた透
視図法は,A. デューラー没後,南ドイツで活躍したクラフ
ツマンたちに受け継がれた.彼らのうち,とくにニュルンベ
ルクを中心に活躍した H. レンカー,L. シュトーア,W. ヤ
ムニッツァーの3人は,それぞれパターンブックを出版して
いる.そこで本研究では,彼ら3人のパターンブックに着目
し,16世紀前半に南ドイツのクラフツマンたちが用いた作図
法について考察し,さらに同時代のフランスやイタリアで用
いられた作図法と比較・検討する.その結果,南ドイツのク
ラフツマンたちは,多面体が組み合わされた立体図形(造形
作品)そのものを表現するために透視図法を用いていた.一
方,同時代のフランスやイタリアの数学者・芸術家たちは,
立体図形そのものの表現をしたのではない.彼らは,立体図
形の外側に空間を想定し,空間グリッドを設定して,精確に
立体図形を描き出していたのである.