抄録
本研究は,これまで芸術の解釈で一般的であった作品批評によらず,芸術を人間意識が含まれた現象として扱うことで,作品が構造化される仕組みを明らかにしていくものである.ここでは,立体と平面を次元の観点で対照的に捉えるのではなく,両者の間に働く機能に注目することで,その関係を総合的に捉えた.空間の2次元化は投影の典型的機能であり,それが伝統的に絵画の構造を決定してきた.その機能をふまえ,セザンヌの絵画論に端緒を持つキュビスムの構造が,本質的に絵画の条件を超え,実空間及び立体と等しいことを明らかにする.本稿はそこよりさらに,実空間のうちに働く時間についても言及し,近代芸術の理念に関する解釈にも展望を示す.