抄録
直線の実長と傾角を求める図解析は図学の典型問題である。この問題を倒置法により学習した理工系大学生がおかす誤りと手続の理解の関係を再生実験で明らかにした。
1. 図学的能力は手続の理解とその原理の理解の2つの領域から構成している。
2. 学習者が再生問題をうまく解けないのは誤った手続の適用が原因と考えられる。
3. 手続と原理を関係づけずに表象した学習者は、正しい手続を記憶していても再生問題で間に合わせの誤った手続を適用した。
4. 手続と原理を関係づけて表象した学習者は、再生問題で正しく手続を実行した。
5. 学習者は言語的命題と視覚的イメージで心の中に手続と原理を表象した。
6. 立体図面の読み書きの図学的前提技能に欠ける学習者は、立体の視覚的イメージをユークリッド座標系で統一しない。言語的命題と立体の視覚的イメージは共通の座標系で対応していないと考える。
7. 図学の解析作図は形状だけでなく角度・長さなどの量的関係が要求される。初心者は曖昧な座標関係の視覚的イメージの立体図形よりも、心の中の言語的命題の表象あるいは平面図形の視覚的イメージから作図の手続の情報を引き出しやすいと考える。