抄録
本研究では, VandenbergとKuseが設計したメンタル・ローテーション・テストをもとにして, 被験者が心的回転以外の方略を用いて解く可能性を減らした改変版メンタル・ローテーション・テスト (MRT) の設計を試みた。改変版では鏡像問題のみを用いて, 各パートが同じ立体で構成されるようにした。また, 過去のデータを基に算出した完答者平均得点の和がなるべく同じになるように問題を組み合わせることによって, 各パートの難易度が等しくなるように設計した。設計した改変版MRTを, 大学生を対象に試行調査して, 誤答分析を行った。同じ立体で構成される問題の完答者平均得点がパート1とパート2でほぼ等しいことから, 改変版のパート間の難易度は等しいことが示された。改変版ではパート2の平均点がパート1より有意に高いが, これは解答速度の上昇に起因すると思われる。得点群別の誤答傾向の分析から, 改変版MRTの中の各問題の相対的な難易度が, 中得点群と低得点群とでほぼ一致していることが示された。中得点群において, パート間で解決速度が上昇しているのは, 心的回転方略を安定して適用する能力や心的回転操作速度が上昇したことを示唆している。今後, 問題数を増やすことで, 高得点群の心的回転能力も飽和せずに測定することが出来ると思われる。