抄録
立体図から描かれた立体を正しく理解するためには, 図学にもとづく公式の手続きを必要とする.立体図から図形の大きさを推論させる実験をしたところ, 図学の投影の規則を知らないしろうとの大学生は非公式の手続きを用いて立体を理解した.公式の手続きとそうでない手続きでは, 図から立体を認知するプロセスが異なっている.図学の学習により公式の手続きを使用する大学生は, 立体図に記述した座標系の情報に注目し, 座標を用いて頂点の位置を決め立体の大きさを復元する.これに対し非公式の手続きを使用するしろうとは, 立体図に記述した立体の辺や角の情報に注目し, 図と立体の間では図形の性質が保存されると誤解して, 図の図形の性質を用い立体を復元する.しろうとの典型的な誤解に立体が立体図と合同な図形であるとみなすものがある.