抄録
本稿では、近年の建築設計教育科目における図学・図形表現科目の圧縮・削減傾向の中、また、図学の体系を把握しない担当者によって設計製図科目へ吸収・包含されるという実態をふまえて、建築独自の設計製図教育と連動する図形表現科目の試案を作成した。これは教養・基礎として下級学年のみで完結する従来型でなく、各学年段階に応じて、設計課題の内容をサポートする形で組んだものである。最初に、現行の建築設計教育の通例的な、小規模から大規模へ、簡単から複雑へ、身近なものからそうでないものへの流れを説明した。プログラムの内容について1~4年次までを大きく3段階に区分して説明している。初級段階では、PCを含めたツールの使用法、絵と図 (図面) の峻別、建築物の単面投象、平面図形を含んでいる。中級段階では、図学における断面・副投象・回転・展開・相貫などの建築への適用、人体と物体の尺度対比、建築における人間の視点・視野による図形表現の特性を要件とし、対物視のみでなく内側から見る環境視への対策を特に重視する。上級段階では、提案型、問題解決型の複雑なものが成果となるため、パネル、ケント紙等の限られた媒体でどのように図形、文字、画像などのプレゼンテーションをするかを学べる内容にする。本論は著者らの長年の経験とディスカッションションによっているので、今後の検証修正が必要である。