図学研究
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ジェフ・ウォール《ピクチャー・フォー・ウィメン》の図的解釈
茂登山 清文
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2004 年 38 巻 Supplement1 号 p. 71-74

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抄録
本研究は、ジエフ・ウォール (Jeff WALL、1946Vancouver-) の1979年の作品《ピクチャー・フォー・ウィメンPicture for Women》について、おもに眼差しと空間性という視点から、図的な解釈をこころみるものである。
写真が美葯作品の主要なメディアとして登場するのは、1960年代のポップアートにおいてである。コンセプチュアル・アートの影響下で活動を始めたウォールは、70年代末に、それまでおこなわれることのなかったような仕方で写真を使用した。ライトボックスにチバクロムをはり、壁に絵画のように掛けるというものである。その代表作のひとつが、《ピクチャー・フォー・ウィメン》である。物理的な形式や、背後からイメージを照らし出す光は、現代社会との関係においてある意味をにない、見る者に多様な読み、解釈の可能性を提示する。ウォールは、この作品を制作するにあたって、エドゥアール・マネの絵画《フォリー・ベルジェールのバー》を参照している。それと同様に、《ピクチャー・フォー・ウィメン》も、鏡をもちいており、男女二人の人物によって構成されている。しかしその画面の中央には、テクノ画像の生成装置であるカメラが据えられ、それによって、制作者であるアーティストと、鑑賞者との眼差しが、作品のなかを行き来することになる。
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