抄録
メンタル・ローテーション・テスト (MRT) の被験者ごとの誤答原因を推定する手がかりを探るために, RSP版MRTで記録された解答過程データから算出した指標―各選択肢の判断消費時間が誤判断消費時間に占める割合―と解答方略の対応について分析した.本稿では, 誤答の多い被験者が苦手とする鏡像問題の1つである問題14に着目した.見かけ上は同じ選択肢の判断ミスによって誤答に至った被験者の中には, 各選択肢の判断消費時間が誤判断消費時間に占める割合に偏りがみられる者とみられない者がいた.偏りがみられる被験者たちの解答過程シークエンス図には, 図形の部分的な特徴に着目して解いていくという共通点がみられた.また, 解答に要した時間や得点が大きく異なる被験者でも, 各選択肢の判断消費時間が誤判断消費時間に占める割合が類似している者は, 解答方略が似ていることも示された.今後, 問題14以外の鏡像問題についても, 解答過程データから算出した指標と解答方略の対応についての分析を進めることで, 各被験者の各問題の誤答原因を特定する手がかりが得られると思われる.