図学研究
Online ISSN : 1884-6106
Print ISSN : 0387-5512
ISSN-L : 0387-5512
広重の絵画空間
―「東都名所、吉原仲之町夜桜」の空間表現の特質―
神山 明
著者情報
キーワード: 造形論, 遠近法, 浮世絵, 広重
ジャーナル フリー

2005 年 39 巻 Supplement1 号 p. 145-150

詳細
抄録
歌川広重の「東都名所」と題される浮世絵の揃い物には、版元や発行年の異なる多くの種類があるが、天保3~5年に喜鶴堂から発刊されたシリーズは、名品として知られている。その中の「吉原仲之町夜桜」は傑作として評価が高く、この作品に描かれた空間には、同シリーズの他の作品とは異なる印象が強く感じられる。筆者はそこに、浮世絵独特の平面的色彩構成による絵画空間ではない、現実に近い空間の広がりを感じた。それは、同時代の絵画の空間表現とは異質の、より現代の空間感覚に近いものである。その印象はどこから生まれているのかを考察することが、本論の主題である。そのため、透視図としての絵画空間の分析、投影法の観点からの他の作品との比較、描かれた対象の形体や構図と色彩についての考察等を行った。その結果、広重は透視図法の表現効果と、構図との関係を考えながら作品を制作しており、表現された絵画空間には他の作品に見られない、現代の写真や絵画に通じる現実感があることなどがわかった。
著者関連情報
© 日本図学会
前の記事 次の記事
feedback
Top