抄録
本文では, 自然画像内の円を抽出するための新た手法を提案する.代表的な円の抽出の従来手法として, 投票方式に基づいたハブ変換がよく知られている.しかし, 投票方式には計算量とメモリ消費とが大きく, 多数のしきい値を必要とするなどの問題がある.また, さまざまな改善手法も提案されているが自然画像への適用は十分ではない.そこで, 我々はディジタル画像の特性と最小二乗法による円推定とを組み合わせた概念を導入する.この概念を用いると, ディジタル画像中の円は8種類の円弧に分類ができる.このような分類は, 円以外の複雑な背景をもつ自然画像から円の一部分が判断できる重要な役割を果たす.提案手法は近傍窓を設定するしきい値のみを利用するので, 様々な入力画像に対する柔軟性をもつ.また, 処理に必要な計算量も少ないので, 高速処理も可能である.評価実験の結果により, 上述の問題点において提案手法が従来手法に対して優れていることを示す.