抄録
当院では,2005年8月より専従の医師職の医療安全管理者が配置され,全職員向けの安全研修の形式を大幅に変更し,全員受講に向け受講率の向上を期した。本研究では,この試みが職員の医療安全意識と組織の医療安全文化を改革することに有効となるか否かを,カスタマイズした医療安全文化を評価するツールを用いて検証し,医療安全意識・医療安全文化の水準とともにその変化に関する分析を行った。職種別の安全意識の変化,職種間の安全意識の変化をSteel-Dwass法による多重比較を行った結果,医療安全集中研修会の開始時と3年経過時では,組織環境・リスクマネジメント・コミュニケーション・自己意識の因子から計算される総合スコアは,組織全体として3年経過時の方が高くなっていることがわかった。このことから,集中研修会という教育介入により,組織全体として安全意識と安全文化が向上していることが示唆された。また,安全意識と安全文化を測定する4つの因子について,職種を問わず,意識の差異が存在することを確認した結果,集中研修会という形で教育介入を行った場合,4つの因子全てに影響を与えるとは限らず,逆に意識を下げうることもあることがわかった。