日本医療・病院管理学会誌
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研究論文
軽症患者の大病院外来受診に関する検討
森脇 睦子梯 正之伏見 清秀
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2016 年 53 巻 2 号 p. 103-112

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抄録

我が国では施策として,病院は入院医療に特化し外来医療は診療所で行うべく病院機能分化を進めているが,いまだ軽症患者の大病院受診が多い。本研究では,軽症患者の大病院外来受診の状況について明らかにした。
国立病院機構病院に属する一般病床200床以上を大病院とし,該当する84病院の外来レセプトデータを使用した。2013年9月30日,10月2日,10月4日に対象施設を外来受診した延べ106,496人について軽症・軽症外を判別し,患者の診療内容と医療費により1回の受診を単位とした分析を行った。軽症患者とは「注射,投薬,処方せん料,リハビリテーション,精神科専門療法の範囲で治療を行った者,ただし抗癌剤投与の患者を除く」とした。次に,2013年4月1日~2014年3月31日に外来受診した患者2,119,357人について,患者単位で年間の受診状況を分析した。
1回の受診を単位とした分析では,軽症が39,458人(37.1%),軽症外が67,038人(62.9%),であった。病床規模別では,200床台では軽症患者42.0%であり,これと比較して400床台では34.7%(p<0.05),500床台は34.5%(p<0.05)で有意な差を認めた。軽症患者の医療費は合計約2億2,000万円で全患者の医療費に占める割合は13.4%であった。患者単位の分析では,1患者における平均受診回数は4.11回(SD=5.53),年間12回以内の受診が94.7%であった。また,全受診が軽症であった患者が337,281人(15.9%)であった。
1回の受診単位の分析では約40%が軽症による受診であり,外来診療の稼働額に影響しない患者を受け入れていた。また,1患者あたりでみると約16%の患者は全受診が軽症によるものであった。病院と診療所との連携を強化することにより,病院の収益に大きな影響をあたえず患者数を削減でき,その人的資源を入院医療にシフトできることが示唆された。

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© 2016 一般社団法人 日本医療・病院管理学会
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