2017 年 54 巻 2 号 p. 55-63
肺癌周術期における術前および術後早期に開始する予防的な呼吸リハビリテーション(以下呼吸リハビリ)と術後肺炎発症との関連についての報告は複数あるが,先行研究は単施設のものや重症度調整がされていない観察研究がほとんどで,十分なエビデンスが示されていない。そこで,86病院8,014名のDPCデータを用いて,手術翌日までに開始されたリハビリを予防的な呼吸リハビリと定義し,術後肺炎発症割合との関連について,傾向スコアを用いた分析を行なった。全体で肺炎発症割合は2.1%,予防的な呼吸リハビリが実施されていたのは48.2%であった。傾向スコアマッチングでは3,091のペアが抽出され,予防的な呼吸リハビリ実施群の肺炎発症割合は,非実施群に比べ小さい結果となった(1.6% vs 2.6% p=0.010)。肺癌周術期の予防的な呼吸リハビリ実施は,実施しない場合と比較し,肺炎発症割合が小さくなる可能性が示唆された。