本研究の目的は,①日本の医師(D)が中国国内患者(P)に対し遠隔画像の読影結果を伝える場合,②Pの中国の主治医(D1)に対し日本の医師(D2)が読影結果を伝える場合に分け,遠隔画像診断の事業スキームが合法的に成立するか否かを検討するとともに,その過程で明確化される法的課題について考察することである。①は,日本のオンライン診療指針の実施要件(原則として初診は「かかりつけの医師」が行うこと等)を充足せず医師法に違反する。また,中国ではオンライン診療は慢性疾患等の再診に限定されており,中国の医師法にも違反する。②は,日本の医師法上,D2の行為はD1に対する単なる助言だと解釈されており同法違反にはならない。また,中国の医師法上も合法であるが,インターネットセキュリティ法等に基づき,Pの個人情報等を国外移転するための安全評価の手続をとる必要がある。日本のオンライン診療指針では医師–医師間(D to D)の行為は適用対象外であるが,遠隔画像診断は治療方針の決定等に影響を及ぼす行為であり,読影医の責任を明確化すること等が必要である。