2023 年 60 巻 3 号 p. 95-103
病院建築の知見やノウハウの蓄積の状況について,病院に対するアンケート調査及びインタビュー調査により明らかにした。アンケート調査の結果からは,病院建築を行う病院のうち8割では,病院建築に関する知見やノウハウを明文化した文書は整備されておらず,病院建築以前に知見やノウハウの蓄積が行われていないことが分かった。また,病院建築の当時の担当者が10年程度経つと,3割ほどの病院で在籍しておらず,人的にも知見の蓄積が難しいことが分かった。したがって,病院建築の際に有用な情報を得ようとするならば,外部から収集する必要があると考えられる。インタビュー調査の結果からは,外部からの情報収集手段としては,他の病院の視察,病院建築プロジェクトチームへの建築系人材や病院建築研究者の参加,建築事業者からの情報提供が一般的であった。中でも,他の病院の視察が外部からの情報収集手段として最も多く挙げられていた。