日本在宅血液透析学会誌
Online ISSN : 2435-2519
透析技術
当院在宅血液透析における電話連絡・緊急訪問の実態と課題
高橋 初
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2024 年 4 巻 1 号 p. 33-42

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抄録

在宅血液透析(HHD)は,患者や介助者に高度な知識と技術を要求し,特にトラブル発生時の迅速な対応が求められる.本研究では,HHDにおけるトラブルの実態を明らかにし,患者負担の軽減および治療の安全性向上に向けた対策を検討した.

2014年から2024年に当院でHHDを実施した12名を対象とし,電子カルテの記録をもとに「電話連絡」と「緊急訪問」の件数と内容を分析した.結果,電話連絡297件のうち,手技・装置設定に関する問い合わせが最多(34.3%),次いで装置故障(28.6%),VA関連(13.8%)が多かった.緊急訪問74件のうち,装置故障が最も多く(74%),次いで手技・装置設定(15%),VA関連(5%)の順であった.

考察として,導入初期に手技・装置設定のトラブルが集中し,段階的指導や視覚的教育ツールの活用が重要であることが示唆された.また,装置故障の予防には,患者による日常点検と医療スタッフの定期点検が有効と考えられる.VAトラブルでは自己穿刺習得の支援強化や定期的な評価が重要であり,物品管理では供給システムの最適化と廃棄物処理の標準化が課題となった.

さらに,災害時の停電・断水対応,経済的負担の軽減策がHHDの継続に不可欠である.今後,教育・支援体制の強化,多職種連携の推進,コスト軽減策の確立を進めることで,HHDの安全性向上と普及が期待される.

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© 2024 一般社団法人 日本在宅血液透析学会
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