日本在宅血液透析学会誌
Online ISSN : 2435-2519
最新号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
研究会記事
  • 大橋 直人, 高橋 初, 杉本 謄寿, 片村 幸代, 櫻田 勉, 小川 智也
    2023 年 3 巻 2 号 p. 49-51
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2024/01/27
    ジャーナル フリー

    在宅血液透析(Home Hemodialysis:HHD)は1998年に保険収載され,各学会でも良好な治療成績が報告されているが,患者数を見ても意図する普及には至っていない.その背景の一つにHHDの実施施設が少ないことが要因として挙げられ,本学会に登録されている実施施設数は全透析施設の約3%(128施設)と年々増加を認めるものの未だ少ない現状である.そこで,本学会では新規にHHD実施を検討している各施設の医師,看護師,臨床工学技士などの医療従事者に対して「人材育成の環境」を支援する目的で研修施設設備WGを発足した.HHDの普及につながる取り組みを見据えた研修施設の選定基準や運用方法などについてWG内で検討したので報告する.

ワークショップ1
  • 喜田 智幸
    2023 年 3 巻 2 号 p. 52-53
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2024/01/27
    ジャーナル フリー

    現在わが国では,在宅血液透析の適応には介助者の同意を必要とし,介助者が不在になれば,在宅血液透析を中止すべきとしている.介助者に求められていることは,患者がどうしてもできないことを補助し,患者の依頼を受けて機器の操作を行う.また,患者もしくは機器にトラブルが発生した場合には直ちに対処,もしくは治療を中止し病院へ連絡するなどの役割も担う.介助者なしでも,患者が全ての在宅血液透析手技を自分で行うことも可能だが,トラブル時の緊急回収,救急医療の手配は患者自身にはできない.この緊急時の対応を介助者に代わって,人工知能(AI)や進歩した機器が行えるようになれば,介助者は不要になる.しかし介助者の多くは,緊急時の対応以外にも大きな負担を抱えている.まずは介助者の負担軽減につながる在宅血液透析の準備,治療,片付けなどの工程の簡略化を進めなければならない.

学会シンポジウム報告
総説
  • 伊東 稔
    2023 年 3 巻 2 号 p. 61-65
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2024/01/27
    ジャーナル フリー

    医療において患者と医療者のコミュニケーションは重要であり,患者の症状や治療に関する情報の伝達や意思決定が含まれる.透析医療では,患者と医療者の関係が長期にわたる特殊な医療であり,良好なコミュニケーションが患者の生活の質にも関連すると考えられる.医療者と患者の関係性は変化しており,医師中心のパターナリズムから患者の価値観を重視する共同意思決定(SDM)へと移行している.透析医療においても患者の主訴や症状に注目し,患者の意向を反映した治療法を採用する取り組みが行われている.また,診療ガイドラインの策定にも患者の意見が取り入れられるようになっている.透析医療は慢性期医療であり,患者の治療に対するモチベーションの維持が難しい場合がある.このような特殊性を考慮しながら,医療者と患者の関係性を良好に維持するためのコミュニケーションスキルが重要である.

  • 甲田 豊
    2023 年 3 巻 2 号 p. 66-73
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2024/01/27
    ジャーナル フリー

    間欠治療である血液透析において,治療時間は様々なところに影響を及ぼす.1970年代に米国で行われた大規模な前向き介入試験で治療時間の長さは有意な予後因子でなかったため,クリアランスを上げて治療時間を短くするという方針が正当化されてきた.しかし,尿毒素によっては体内コンパートメント間の移動抵抗が大きく,時間をかけないと十分な除去ができない.リンや中分子がこれに該当する.透析低血圧のリスクを避けて細胞外液量を正常化するにも時間は長い方が有利であり,良い生命予後と関連する.同じ値のKt/Vであっても,時間(t)を大きくして達成されることが重要であり,時間とKt/Vは死亡リスク減少と相乗的な関連を認める.しかし,透析患者の治療に対する要望や優先事項の調査では,逆に「透析時間を短くしてほしい」が予想外に多かった.血液透析は透析患者にとっては「完全義務」であるのに対し,血液透析自体は「不完全な治療」であることの非対称構造を考えると,相互理解が求められる.それは正解のないゴールを求めることに似て,話し合う過程が目的となりうる.

  • 古薗 勉
    2023 年 3 巻 2 号 p. 74-77
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2024/01/27
    ジャーナル フリー

    在宅血液透析(HHD)では,科学的根拠に基づいた医学的および社会科学的な解析により,週3回4時間の一般的な施設透析療法に比べて,病状の改善,生活の質や費用対効果などが格段に向上することが知られている.本稿では,約35年をかけて全ての腎代替療法の恩恵を享受している著者が,患者としての体験に基づく意見と共に,医工学研究に携わる研究者として現在取り組んでいる在宅人工臓器治療に係る推進活動の一端に触れつつ,HHDの意義について多方面から論じる.

  • 北島 幸枝
    2023 年 3 巻 2 号 p. 78-85
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2024/01/27
    ジャーナル フリー

    長時間透析は,食生活の自由度が高く,食欲の安定と食事摂取量の確保により良好な栄養状態の維持が期待できる.慢性腎臓病に対する食事療法基準2014 年版(日腎会誌2014;56(5))は,標準的透析患者を対象としており,長時間透析のための指針ではなく,適切な栄養素摂取に関する報告もない.食塩管理も含めてエネルギーやそのほかの栄養必要量は個別の栄養アセスメントをとおして考えなければならない.

    一方,食生活の自由度が高いことは,一般的に制限があるカリウムやリンの摂取を気にせず食事を摂ることができるが,完全な自由食ではない.長時間透析においても,体液量(体重)管理のために食塩管理は重要である.

    長時間透析のメリットを最大限活かすために「しっかり食べながら減塩」の食事指導は基本である.そのためには,「しっかり食べて」の表現だけではなく,多様化する生活背景に応じた,具体的な食塩管理指導を実践する必要がある.

  • 池田 潔, 松岡 一江
    2023 年 3 巻 2 号 p. 86-93
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2024/01/27
    ジャーナル フリー

    我々はカフ型カテーテル(Tunneled Cuffed Catheter:TCC)がHHDにおけるバスキュラーアクセス(Vascular Access:VA)の選択肢となり得ればHHD患者の増加が見込めると考え,普及に向けての問題点と解決方法を検討してきた.これまで患者選択基準を透明化しTCC留置管理マニュアルを作製,医療施設間及び医療者と患者間で共有を開始した.そしてTCCを選択肢としてHHD導入の際から提案し,これまでVAとしてTCCを選択しHHDを開始した患者を複数経験しており,その有用性を実感している.

    TCCの一番の懸案事項は易感染性の問題であろう.今回当院のTCC-HHD症例の感染状況を評価し,感染対策についてまとめてみた.

    感染を起こさない工夫と努力,そして感染が起きた場合に,早期に適切な対応をすることで,TCCをVAとする在宅血液透析が安心して行えると考えている.

原著
  • 星子 清貴, 吉谷 亮, 森石 みさき, 川西 秀樹, 土谷 晋一郎
    2023 年 3 巻 2 号 p. 94-98
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2024/01/27
    ジャーナル フリー

    機械学習を用いた在宅血液透析(HHD)のトラブル解析が,業務の効率化や対応品質の向上化に寄与するかについて検討した.対象は2011年11月~2022年7月の間に電話対応が可能であったトラブル424件とした.機械学習の環境はOSをWindowsとしGoogle ColaboratoryでPython3.7.12を用いた.特徴量は個人識別ID,警報発生の有無,トラブルの発生状況,発生時の透析機器のモードとした.決定係数はトラブル対応した24パターンからトラブルが血液回路セットミスなど人為的ミスから起因するものかそれ以外のトラブルで2値分類とした.結果は正解率0.9124,再現率0.9191,一致率0.9255,F1スコア0.9195,AUC0.9639となった.今回トラブルの発生状況などからトラブルの原因が人的ミスによるものかそれ以外のトラブルかを分類するモデルを構築した.テストデータにおいては全体の正解率0.9449となりとなり精度の高いモデルを構築することができた.機械学習をHHD管理に用いることは有効である.

  • 黒田 沙織, 井本 千秋, 種田 美和, 門嶋 洋子, 不動寺 美紀, 宮下 美子, 中井 滋, 政金 生人
    2023 年 3 巻 2 号 p. 99-108
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2024/01/27
    ジャーナル フリー

    わが国の在宅血液透析(Home HemoDialysis:HHD)の施行における介助負担の軽減への支援の示唆を得るため,国内のHHD実施施設67施設の介助者への支援状況と,介助者298名の介助の状況を質問紙調査にて調査した.HHD実施施設の介助者への支援では,HHD導入後の介助者への面談の機会は減少しており,介助者同士の交流の場や,介助者の休息を目的とした施設透析を定期的に行っている施設は少なかった.HHD介助者は患者の配偶者である女性が多く,介助の実際はごみの処理や定期メンテナンスの同席等,治療時の準備や補助よりも治療時以外の介助が多かった.介助者は患者の体調の改善等の治療効果を実感しやりがいを感じているが,トラブルの対処や介助への責任感に精神的負担を抱えていた.介助者の希望するサポートには,透析施設からの情報提供や心理的援助,あるいは他の患者や介助者との交流の場を設ける,更には介助者休息のために一時的な施設透析を行うなどがあった.

feedback
Top