日本在宅血液透析学会誌
Online ISSN : 2435-2519
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原著
  • 原 正樹, 中釜 祥吾, 川畑 勝, 桃木 久美子, 清水 比美子, 田中 春奈, 西田 洋文, 山口 惠理香, 野老山 武士
    2024 年4 巻1 号 p. 1-7
    発行日: 2024/09/27
    公開日: 2025/09/27
    ジャーナル フリー

    在宅血液透析患者24例を対象として,透析量評価の簡便な指標であるhemodialysis product(HDP)とstdKt/Vの関連性を検討した.HDP(95.1±35.7)とstdKt/V(4.91±1.99)は有意に相関した(R=0.453,p=0.0263).stdKt/VのHDP 108≦に対するarea under the receiver operating characteristic(AuROC)curveは0.859(p=0.0022),stdKt/Vの至適カットオフ値は4.547(感度88.9%,特異度80%),HDPのstdKt/V最高三分位(6.86±1.95)に対するAuROCは0.878(p=0.0174),HDPの至適カットオフ値は108(感度77.8%,特異度86.7%).stdKt/VとHDPは有意に関連している.HDPを用いる際のstdKt/Vの参考値を示した.

  • 高橋 初
    2024 年4 巻1 号 p. 8-16
    発行日: 2024/09/27
    公開日: 2025/09/27
    ジャーナル フリー

    2014年から2023年において,施設血液透析(CHD)から在宅血液透析(HHD)へ移行した患者9名を対象にし臨床効果について検討した.方法として透析前血液検査結果をCHD,HHD移行3,6,9,12カ月後,薬剤投与状態を1ヶ月毎に調査した.透析前血液検査ではCr,UA,BUNは有意差が確認された.薬剤投与比較では,CHD群に比べてHHD群がリン吸着薬の減量が確認された.一方でカルシミメティクスはHHD群において増加が認められた.尿毒症性溶質の血中濃度低下については効果が確認されたが,カルシミメティクス投与量がHHD群で増加したことからi-PTH,P,Caのモニタリングの重要性が示唆された.

  • 林 秀信
    2024 年4 巻1 号 p. 17-21
    発行日: 2024/09/27
    公開日: 2025/09/27
    ジャーナル フリー

    在宅血液透析が我が国に普及していない原因の一つに,在宅血液透析が患者による自己穿刺に限られていることがあると考えられる.多くの諸外国では,介助者穿刺が認められているのに,なぜ我が国では認められていないのか.そこで,本稿では我が国の法制度において介助者穿刺が違法性を有するのか,そうでないとしたら保険医療としての相当性に問題があるのかについて,論じてみた.

    その結果,我が国の法制度において在宅血液透析を介助者による穿刺で行っても違法性を帯びることはなく,また保険医療として認められない合理的理由を見出すことはできなかった.

透析看護
  • 前田 由記, 原田 友美, 山口 及子, 石田 和歌子, 住谷 ゆみ, 荒木 陽子, 一色 啓二, 富田 一聖, 富田 耕彬
    2024 年4 巻1 号 p. 22-27
    発行日: 2024/09/27
    公開日: 2025/09/27
    ジャーナル フリー

    2022年に当院で行った在宅血液透析(Home Hemodialysis;HHD)での日常的な役割や負担に関する介助者を対象としたアンケート調査を行ったところ,介助者が個々にストレスを抱えていることが判明した.さらに詳細を明らかにするため臨床工学技士によるHHD機器の定期メンテナンスの際に看護師による介助者面談を患者居宅にて行った.その結果,介助者が体調不良の際にもHHDの介助を強いられていたこと,繰り返すシャント誤穿刺などで,介助者のストレスが蓄積していたことが面談で明らかとなった.面談内容からHHD施行とその介助への不安や,一時的な施設での透析を望むことなど,患者・介助者に対する日常のHHD管理では分かり得なかった介助者の思いが浮き彫りとなった.特に患者と介助者の間で自己穿刺を含めたシャント管理に対し考え方が乖離していた患者・介助者に対して,自己穿刺や回路の固定方法の再訓練など積極的な介入に取り組んだ結果,患者・介助者関係が改善したケースを経験した.HHD施行は患者が中心となるため,日々の些細な言動が介助者のストレスの原因となる.介助者はHHDのメリットを理解しつつも,身近にその思いやストレスを共有できる存在が少なく,孤独から負のジレンマに陥りやすい.今回患者の病態もHHD管理にも詳しい看護師と介助者との直接的な個別面談が,介助者の思いに寄り添い共感することを介して,日常的に介助者が抱えているストレスや不安を安心して表出できる場となった.介助者面談はその支援を考えるうえで,介助者の思いを汲み取れる重要なアプローチと考える.

透析技術
  • 福留 悠樹, 吉岡 典子, 藤原 健司, 長野 圭吾, 道脇 宏行, 岡田 一義
    2024 年4 巻1 号 p. 28-32
    発行日: 2024/09/27
    公開日: 2025/09/27
    ジャーナル フリー

    7年以上在宅血液透析(home hemodialysis:HHD)を実施した患者(HHD患者)1名の個人用透析装置(現行機)が製造中止となり,部品供給が停止した.そのため同メーカの次世代装置に更新することとしたが,現行機と比較し一部操作方法の異なる箇所が認められたため,操作方法の再教育が必要となった.しかし当院が新型コロナウイルス感染症の基幹病院となり,次世代装置を使用した対面での教育が困難となったため,打開策として動画を使用した自宅学習を行い評価した.結果,動画を用いた自宅学習で実技テストは大きな問題もなく合格した.次世代装置へ入れ替え後,患者の手技に関するトラブルは報告されなかった.患者からは頻回な通院や入院が必要なかった点が評価された.本評価から動画による自宅学習の導入は有用であり,HHD患者に対する教育の向上を見込める有用なツールに成り得ることが示唆された.今後HHDの導入時の自己穿刺等についても内容の充実,教育期間の短縮に繋がる可能性がある.

  • 高橋 初
    2024 年4 巻1 号 p. 33-42
    発行日: 2024/09/27
    公開日: 2025/09/27
    ジャーナル フリー

    在宅血液透析(HHD)は,患者や介助者に高度な知識と技術を要求し,特にトラブル発生時の迅速な対応が求められる.本研究では,HHDにおけるトラブルの実態を明らかにし,患者負担の軽減および治療の安全性向上に向けた対策を検討した.

    2014年から2024年に当院でHHDを実施した12名を対象とし,電子カルテの記録をもとに「電話連絡」と「緊急訪問」の件数と内容を分析した.結果,電話連絡297件のうち,手技・装置設定に関する問い合わせが最多(34.3%),次いで装置故障(28.6%),VA関連(13.8%)が多かった.緊急訪問74件のうち,装置故障が最も多く(74%),次いで手技・装置設定(15%),VA関連(5%)の順であった.

    考察として,導入初期に手技・装置設定のトラブルが集中し,段階的指導や視覚的教育ツールの活用が重要であることが示唆された.また,装置故障の予防には,患者による日常点検と医療スタッフの定期点検が有効と考えられる.VAトラブルでは自己穿刺習得の支援強化や定期的な評価が重要であり,物品管理では供給システムの最適化と廃棄物処理の標準化が課題となった.

    さらに,災害時の停電・断水対応,経済的負担の軽減策がHHDの継続に不可欠である.今後,教育・支援体制の強化,多職種連携の推進,コスト軽減策の確立を進めることで,HHDの安全性向上と普及が期待される.

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