抄録
ヒドロキシプロリン(H-P)がコラーゲンに特異的に存在するアミノ酸であることから,尿中H-Pの測定が骨回転の有力な指標となりうること,また,動物実験でカドミウム(Cd)投与により尿中H-P排泄が上昇することなどが報告されている.これらのことからCd汚染地域住民の尿中H-P排泄について検討した. 対象は,群馬県T亜鉛製錬所周辺のCd汚染地域の50~59歳男女住民312人と,同じ保健所管内の非汚染地域住民50-59歳男女57人である.尿中H-PレベルはProckopらの方法で測定し,得られた測定値はH-P,Cd共にクレアチニン比を求め爾後の検討に当てた. Cd汚染地域住民の尿中H-P,Cdレベルは男女共に非汚染地域住民に比べて高値であり,同一地域内では男に比べ女が高値であった(p<0.05~p<0.01).一方,男についての検討かち喫煙が尿中H-P,Cdレベルを高値化する傾向のあることが認められた. このことから,女について喫煙者を除外して改めて尿中H-P,Cdレベルを求め,地域間比較を行ったが得られた所見は喫煙者を含めた場合と全く同傾向のものであった.同様に,喫煙者を除外した女について尿中H-P,Cd,β2ミクログロブリン各測定値間の相関を求めた結果,r=0.210~0.226であり,いずれも有意ではあるが決して高度とはいえないものであった. 以上からCd汚染地域住民のコラーゲン代謝に何らかの異常が生じている可能性が推測されるが,今後,より明確な根拠を得る必要があると考えられる.