2003 年 14 巻 1 号 p. 38-48
本稿は、医療的相互作用過程の質的分析に関する論争において示唆されたものの、具体的には展開されなかった分析方法を新たな観点から提案し、当の論争において公表された慢性病診察過程のデータを再分析することで、その有効性を検証することを目的としている。特に本稿は、ディスコース分析を用ることで、社会的相互作用論による相互作用過程の分析では明らかにされなかった、医師・患者による個々の発話の意味と文脈の協働的構築過程を明らかにするとともに、ローカルな診察の場で、どのようにして「病の軌跡」がコントロールされるのかを詳細に明らかにした。この作業を通して本稿は、具体的な分析方法を新たに提示するとともに、それが特定の医療的相互作用の特殊性を記述することができることを示した。