抄録
本稿は、(1)米国における外国人看護師受け入れの経緯と現状、(2)問題の概要を紹介し、(3)我が国の保健医療社会学への含意について述べることを目的とする。米国は、第二次世界大戦後、交換訪問プログラムを通じて外国人看護師を有期有給研修者として受け入れてきたが、1965年から米国に長期定住または永住する就労移民として受け入れることで慢性的な看護師不足に対応してきた。しかし、受け入れにあたっては、異文化間コミュニケーションの問題や採用活動をめぐる倫理水準確保の問題があることを指摘した。我が国ではフィリピンから看護師候補者を受け入れることになったが、これに対して保健医療社会学は、グローバル化する看護労働市場について社会理論的に考察したり、フィリピン人看護師受け入れ後の臨床現場を分析したりする必要があることを指摘した。外国人看護師受け入れ問題について保健医療社会学の立場から取り組む際の一助となれば幸いである。