保健医療社会学論集
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原著
インドネシア・ジャワ農村部におけるマントリ・クセハタン(Mantri Kesehatan)およびビダン(Bidan)の役割――高齢者の病い対処行動を通して――
合地 幸子
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2015 年 26 巻 1 号 p. 58-67

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抄録

本研究は、東南アジア・インドネシア・ジャワ農村部における、高齢者の病い対処行動に見られる高齢者と治療者の依存関係から治療者の役割を考察したものである。本論文では、西洋式の看護教育を受けた近代的な施術師マントリ・クセハタンおよびビダンに着目した。マントリらのホーム・ケアを選択する高齢者は医療器具装着者に多い。家庭で療養することを望む重度の病いを患う高齢者とその家族はマントリらによるホーム・ケアを通して近代的な治療を短期間に断続的に利用していた。インドネシアにおいてホーム・ケアが制度化される以前から農村部におけるマントリらは地域住民に対して集団の一員として治療を施してきた。伝統的な社会の価値観を持ち、近代的な治療行為ができるマントリらではあるが、人々が完全にマントリらに依存することはなかった。マントリの役割は治療を通して伝統と近代をつなぐことである。

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© 2015 日本保健医療社会学会
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