保健医療社会学論集
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大会長講演
健康と病理
村岡 潔
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2018 年 28 巻 2 号 p. 1-10

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抄録

本稿は、近代医学における「健康と病理」/「正常と異常」をめぐる下記の諸観点・諸要素についての概説である。I)では19世紀の細菌学と特定病因論並びに自然治癒力について;II)では健康の定義の3つのあり方:健康=病気の不在、日々の生活で不自由のないことや身体内外全体でバランスがとれていること;III)心身相関の立場では、患者には人生に楽観的と悲観的の2タイプがあるが、前者の方に回復傾向が強いこと;IV)集団の連続性では平均から遠ざかるほど病気度が高いこと(切断点で健康か病気か分別);V)「未病」と「先制医療」バーチャルな医療戦略は予防医学の最高段階にあり、未来を先取りした病気(未病)に先手攻撃を仕掛けること;VI)余剰では、相関があっても因果関係はないこと;サイボーグ化とエンハンスメントの関係、並びに「言語の私秘性と公共性」をとりあげ、認知症の人が私秘的で内的な言葉の世界で生きている可能性について論じた。

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© 2018 日本保健医療社会学会
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