地域包括ケアシステムの中で、医師に求められるコンピテンシーとして重要なものは、「対話」と「連携」であろう。今後さらに増加する認知症や慢性疾患をケアする上では、ヘルスケアの「生活モデル」へのシフトが不可欠であり、医学モデルとは異なるコンピテンシーが求められる。それは、患者のナラティブ(物語)を協働的意思決定のプロセスに統合していくような技法(患者中心の医療の方法)や、患者を家族システムの一部と捉え、患者・家族と「対話」する中で行うケア(家族志向性ケア)である。あるいは、地域住民とパートナーとして協働し、健康問題の解決にあたるアプローチ(地域志向性アプローチ)や、多職種と「連携」できるような環境を整える能力(協働型リーダーシップ)が求められる。さらに、問題を取り除くのではなく、健康を支える強みや資源を強化する「健康生成論的アプローチ」も、地域で働く医師にとって重要なアプローチの一つであろう。