超高齢社会を迎える日本では、医療資源の不足から在宅死への移行が推進されている。本稿では、約半数が在宅死を迎えるイタリアを事例として、高い在宅死率が何に由来するかを、医療福祉制度を含めた社会の在り方や利用可能な資源に焦点を当てて検討した。イタリアにおける在宅死率の高さには、死に至る過程を自宅で過ごすことを可能にする条件、すなわち要介護高齢者の家族によるケア、ケア労働者によるケアの普及が関連していると考えられた。その背景には南欧に共通する公的な福祉サービスの不足と、強固な世代間連帯の規範があり、家族主義的価値観は、安価で柔軟なケア労働力である移民女性の存在によっても維持されている。