保健医療社会学論集
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学会・研究動向
都道府県及び指定都市の新生児マス・スクリーニングの認識——タンデムマス質量分析計の導入と検出疾患の拡大に着目して——
笹谷 絵里
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2019 年 30 巻 1 号 p. 76-80

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抄録

本稿では、1977年から日本で導入された新生児マス・スクリーニングが2014年4月から、タンデムマス質量分析計による検査方法に変化し、検出される疾患も従来の6疾患から19疾患以上に増加したことによる実施主体の運用の現状を検証した。日本では、早期発見・早期治療を目的に新生児マス・スクリーニングは導入された。だが、増加した疾患の中には死亡率の高い重症例も含まれる。さらに検出される疾患の多くは遺伝性疾患であり、子どもの疾患が明らかになることで、親の遺伝情報も明らかになる。本調査では、2014年以降の検出疾患の増加に対して実施主体はどのような運用を実施しているか、質問紙調査を実施した。結果、実施主体である都道府県や指定都市は、新生児マス・スクリーニングを「遺伝医療」と理解して個人情報に対応しているわけではなかった。今後、実施主体も遺伝学的検査としての社会的影響を考慮した対応が必要となるであろう。

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© 2019 日本保健医療社会学会
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