2020 年 30 巻 2 号 p. 64-73
本稿は、過去の慢性うつ患者へのインタビュー調査の再分析を行うことで、医療者が患者の語りを理解するための示唆を得ることを目的とした。再分析の視点として、A・クラインマンの「ヘルスケア・システム」概念を用いた。再分析の結果、医療者は、慢性うつ患者の語りを「治療目標にそって自律的に疾患管理を行う」という水準だけで捉えるのでなく、「様々なところにケアを受けられる場を作る」という〈自己管理〉の水準で捉える必要があることが示唆された。また、「ヘルスケア・システム」という視点を持つことで、医療者は患者の語りを、「専門職セクター」からのみ理解するのではなく、「民間セクター」を中心とした物語へと再構成して捉え返すことができることが示唆された。