2015 年 75 巻 3 号 p. 362-367
今回われわれは,舌下–オトガイ下に発生した巨大な類表皮嚢胞を経験したので,その概要を報告する.症例は55歳,男性,オトガイ下の腫脹を主訴に当科を受診した.オトガイ下部に無痛性,弾性軟のびまん性腫脹を認め,家族から睡眠時の無呼吸状態を指摘されていた.MRI検査ではT1強調像で低信号,T2強調像で高信号の50×30×50mmの嚢胞性病変本体をオトガイ下に確認し,病変の一部は舌骨上筋から口底方向に伸展を示していた.術前の睡眠ポリグラフ検査を行ったところ無呼吸/低呼吸指数(apnea-hypopnea index,以下AHI)が22.6と中等度の睡眠時無呼吸症候群と診断された.臨床診断で類皮あるいは類表皮嚢胞を疑い,全身麻酔下,口外法で嚢胞摘出術を行った.病理組織検査では顆粒層を有する角化重層扁平上皮で裏層された嚢胞形成を示し,腔内に層状の角化物を伴うも嚢胞壁に皮膚付属器を認めず,類表皮嚢胞と診断した.術後のAHIは9.3と著明な改善がみられた.