2021 年 81 巻 1 号 p. 47-52
指尖部に対するfish-mouth incisionは,切断指再接着術後の鬱血予防法の一つであるが,指動脈の開存状態の評価にも有用であるとの報告もある.本症例はプレス機で受傷した右示指,中指完全切断で,玉井分類zoneⅢであった.再接着し得たが,指神経は縫合困難であった.腓腹神経を用いた二次再建施行時,空気止血帯の使用や手術操作による指動脈攣縮による一時的な示指の血流不全を認めた.手術直後に,fish-mouth incisionを加え,ヘパリンNa加生理食塩水の直接持続滴を開始することで,術後の血流を評価し,救指し得た.切断指再接着術においては,術中の空気止血帯の使用は最小限とし,fish-mouth incisionとヘパリンNa加生理食塩水の直接持続投与による血流評価が重要であることが示唆された.