昭和学士会雑誌
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症例報告
無症候性COVID-19感染後に発症した小児多系統炎症性症候群の一例
東 みなみ髙木 俊敬岡田 祐樹大川 恵本多 愛子渡邊 優水野 克己
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2023 年 83 巻 3 号 p. 232-239

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抄録

小児多系統炎症性症候群(MIS-C)がSARS-CoV-2 PCR,抗原陰性かつN抗体陽性で無症候性コロナウイルス感染症2019(COVID-19)の児に生じた本邦初の症例を報告する.症例は5歳女児.入院1か月前にCOVID-19の濃厚接触者になったが,無症状で1回施行したPCR検査も陰性であった.3日前より頸部痛と38℃の発熱が出現し入院となった.入院後に眼球結膜充血以外の川崎病主要症状が出現したため,各種検査と合わせて川崎病を疑いガンマグロブリン,アスピリンで治療を開始した.その後,第6病日から血圧低下と不穏や異常行動を認め,CRP 22.4mg/dlと上昇したため,MIS-Cを疑いインフリキシマブ,ウリナスタチンも追加投与した.第9病日に解熱,第11病日に症状が消失し,第20病日に明らかな合併症なく退院した.第19病日の採血でSARS-CoV-2 N抗体が検出され,MIS-Cと診断した.MIS-Cの合併症や長期予後は川崎病とは異なるため,COVID-19感染者や濃厚接触者に川崎病を疑う症状が出現した場合はMIS-Cの発症の可能性を考慮すべきである.今後は本邦での症例を集積し,MIS-Cに関する予後の解明を行うことが重要である.

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