昭和学士会雑誌
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83 巻, 3 号
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特集:リウマチ・膠原病診療の最前線とトピックス
  • 笠間 毅
    2023 年 83 巻 3 号 p. 163-164
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
  • 磯﨑 健男, 林 智樹
    2023 年 83 巻 3 号 p. 165-174
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    関節リウマチ(RA)をはじめとした自己免疫疾患の治療は分子標的薬の登場により大きく変貌を遂げた.また,分子標的薬はRAだけでなくここ数年で他の膠原病に対しても臨床応用が始まった.既存の治療薬であるステロイドや免疫抑制剤のターゲットは非特異的なものであったが,分子標的薬はサイトカインあるいはサイトカインのシグナルを抑制することにより効果を発揮する.しかしながらRAを含め他の膠原病においては寛解を達成できる患者は十分でなく,病態におけるサイトカインの役割はまだ不明な点も多い.本稿ではサイトカイン・ケモカインがどういった物質であり,いかにして自己免疫疾患へと関わっているかを最近の研究結果などから解説する.特にケモカインの中でも唯一のCX3であるfractalkine/CX3CL1は多くの自己免疫疾患での発現と病態への関与が報告されている.それに関連する最近のトピックとして ①ADAM family,②翻訳後修飾について記載する.ADAM familyはサイトカインやケモカインを細胞外ドメインの可溶性の活性化を持たせたり,細胞表面での接着因子としてのセレクチンファミリーの活性化にもかかわっているとされる.RAを中心に炎症性筋疾患や間質性肺炎といった疾患でADAM familyは疾患の活動性と相関を認め,炎症の惹起や血管新生につながる病態での発現も報告されている.現在開発の進んでいる次世代型抗体薬としては,糖鎖改変型抗体やBispecific抗体,低分子抗体なども存在している.各論としてRAや全身性エリテマトーデス(SLE),炎症性筋疾患,シェーグレン症候群といった膠原病疾患でのサイトカインの役割と臨床での新規治療薬剤について解説していく.特にSLEではここ数年サイトカインをターゲットとした分子標的薬が臨床応用されるようになった.インターフェロンとの関連について最新の臨床試験の結果も併せてまとめていく.
  • ―難治例,合併症症例をどのようにマネジメントするか―
    三輪 裕介, 小西 典子, 石井 翔, 石髙 絵里子, 西見 慎一郎
    2023 年 83 巻 3 号 p. 175-180
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    関節リウマチ(RA)は,有効性の高い生物学的製剤やヤヌスキナーゼ阻害薬など新規分子標的治療薬の登場で,その予後は飛躍的に改善した.しかし,現在推奨されている治療法・管理方法で治療を行っても,一部のRA患者では症状が残存し,治療困難なRA(Difficult-to-treat rheumatoid arthritis;D2T RA)と呼ばれている.D2T RAを1)RAと鑑別困難,2)治療強化が困難なRA,3)治療強化を行っても難治性のRAの3つに分類した.また,2)治療強化が困難なRAについては,(1)薬剤有害事象,(2)アドヒアランス不良,(3)不適切な薬剤管理,(4)合併症,(5)経済面の5つに分類した.3)治療強化を行っても難治性のRAについては,(1)難治性RAの分類,(2)炎症性と非炎症性の鑑別,(3)炎症性難治性RAへの対応,(4)非炎症性難治性への対応の4つに分類した.それぞれの問題点と現時点における解決法について述べる.
  • 西見 慎一郎, 矢嶋 宣幸
    2023 年 83 巻 3 号 p. 181-189
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    全身性エリテマトーデス(SLE)は,多臓器が侵される全身性自己免疫疾患である.SLEの発症メカニズムとして,疾患感受性遺伝子による遺伝的要因に環境要因が加わり,さらに自然免疫の異常,獲得免疫の異常が引き起こされることにより起こると考えられている.近年,遺伝的要因として,ミトコンドリアの機能不全やSLE患者と健常人の血液から取り出した27種の免疫細胞を解析し,疾患に関わる遺伝子の発現パターンを調べた結果,細胞種ごとに疾患の発症に関わる遺伝子と疾患の活動性に関わる遺伝子が存在し,多くの細胞で両者の遺伝子のメンバーが異なり,SLEの発症と増悪では異なる病態メカニズムが働いている可能性が指摘されている.また,Ⅰ型インターフェロンなどの自然免疫の関与が指摘されており注目されている.SLEの治療薬は従来,副腎皮質ステロイドを中心としたものが使用されてきたが,近年生物学的製剤を含む免疫抑制薬の発展が目覚ましく併用されており良好な成績をおさめている.ヒドロキシクロロキンはヨーロッパリウマチ学会のリコメンデーションでは,全例HCQを投与することが推奨された.ミコフェノール酸モフェチルはループス腎炎の寛解導入治療薬としてシクロホスファミドと差がないことが証明されており治療の主流になりつつある.また,B細胞系をターゲットとした治療薬としてリツキシマブやベリムマブといった生物学的製剤も臨床応用されている.また,経口カルシニューリン阻害薬であるボクロスポリン,BAFF/APRIL双方を中和するアタシセプト,セレブロン調節薬であるイベルドミド,JAK阻害薬など新規薬剤の開発・臨床試験も進んでおり今後さらに治療は発展していくと思われる.
  • 西見 慎一郎, 若林 邦伸
    2023 年 83 巻 3 号 p. 190-197
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)などの炎症性筋疾患は間質性肺疾患(ILD)を合併することが多く,一言にILDといってもその病型はさまざまであり,治療方針や予後に大きく関連する.また近年,筋炎関連自己抗体の種類により臨床経過が異なることが分かってきた.抗ARS抗体はアミノアシルtRNA合成酵素に対する自己抗体であり,筋炎,発熱,多関節炎,間質性肺炎,Raynaud現象,機械工の手といった抗ARS抗体症候群と呼ばれる臨床症状を呈する.HRCT所見・病理所見としては,非特異性間質性肺炎パターンが多いが,一部に浸潤影を合併するものもある.現在,抗ARS抗体は8種類同定されており,その種類により表現型が異なることが分かってきた.抗MDA5抗体はMDA5と呼ばれる感染防御に関与している蛋白を対応抗原とする自己抗体であり,本抗体陽性例では,筋症状は乏しいが,画像上,びまん性肺胞傷害パターンをとる数日から数週間の経過で呼吸不全に至る急速進行性ILDを高頻度に合併する.2020年にPM/DMに合併するILDに関して,日本呼吸器学会と日本リウマチ学会の共同で作成された「膠原病に伴う間質性肺疾患の診断・治療指針」において,治療アルゴリズム(案)が提案された.特に抗MDA5抗体陽性例では,ステロイドパルス療法を含む高用量PSLに,カルシニューリン阻害薬,シクロホスファミド間欠大量静注療法を初期より用いる3剤併用療法が推奨された.近年,これら3剤併用療法でも効果不十分の症例には血漿交換療法など新たな治療法も行われるようになってきた.
  • ―女性のライフイベントと治療の両立―
    磯島 咲子
    2023 年 83 巻 3 号 p. 198-203
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は多発関節炎を主病変とする自己免疫疾患であり,妊娠可能年齢女性にも好発する.近年は治療薬の進歩により早期から寛解を目指した治療を行うことが可能であり,治療目標は患者のQOLを保ちながら寛解を維持することである.ゆえに若年女性患者が妊娠を希望した際には妊娠・授乳が可能な薬でRA治療を継続していくことが重要である.本稿ではまずRAと妊娠がお互いに与える影響について記載した.RAの活動性が高い状態は妊孕性の低下に加え,産科的合併症のリスクが高くなることが知られている.これまで妊娠するとRAは一般的に良くなるとされていたが,活動性が高い状態のまま妊娠した場合は,妊娠中の改善は限定的であることがわかってきている.よって関節破壊を起こさせず,よい妊娠転帰を迎えるためには,RAが安定した状態で妊娠し,妊娠中も活動性を安定させておくことが重要である.次に妊娠を考慮した際の具体的なRA治療戦略に関して,妊娠前,妊娠中,授乳期の3つの時期に分けて記載した.RAのアンカードラックであるMTX(methotrexate)は妊娠中・授乳中の使用は禁忌であり,さらに妊娠前1月経周期以上の休薬が必要である.MTX中止に伴い関節炎が再燃している,もしくは再燃が予想される場合には安全性が高いとされる薬にて適切な介入をしていくことが望まれる.妊娠中や授乳中に薬を使用することは患者にとって大きな不安になりうるため十分な説明を実施し,同意のもと治療を行うことが重要である.合併症妊娠において最善の転帰を得るためには妊娠前からのプレコンセプションケア,計画妊娠に加え,妊娠中・産後にかけての他科,多職種との集約的医療が非常に大切である.最後に昭和大学リウマチ膠原病「母性外来」での取り組みを紹介し,本稿のまとめとさせていただいた.
総説
  • 宮内 彩, 雷 小峰, 宮崎 章, 金山 朱里
    2023 年 83 巻 3 号 p. 204-210
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    変形性関節症は関節軟骨の破壊を伴う最も一般的な関節疾患であり,extracellular matrix(ECM)分解酵素であるmatrix metalloproteinase-13(MMP-13)やa disintegrin and thrombospondin motif-5(ADAMTS-5)が病態を促進させることが明らかとなっている.近年,われわれはメカニカルストレス応答性アダプター分子Hydrogen peroxide-inducible clone-5(Hic-5)が炎症性サイトカインやメカニカルストレスに応じて,MMP-13およびADAMTS-5の軟骨細胞内での発現を誘導し,変形性関節症発症を促進することを報告した.本総説では変形性関節症治療標的としてのHic-5の可能性について,および細胞接着斑分子Vinculin,Talinの変形性関節症への関連について,シングルセルデータを用いて考察する.
原著
  • ―FTIRによる呼気分析―
    稲垣 貴惠, 渡邊 賢礼, 本多 英彦, 山本 雅人, 中村 裕也, 金田 智美, 稲垣 昌博, 弘中 祥司
    2023 年 83 巻 3 号 p. 211-220
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    近年,口腔内臭気を用いて,非侵襲で歯周疾患の程度を想定する方法が注目されている.そこで今回,歯周疾患の患者の歯周ポケット測定前の呼気をフーリエ変換赤外分光光度計(Fourier Transform Infrared Spectroscopy:FTIR)分析し,歯周ポケットの深さ(Probing pocket depth:PPD)と,歯周ポケット内での総細菌数(対数),歯周ポケットからの出血部位の割合(Bleeding On Probing:BOP)で比較検討し,歯周病との関連について検討を行った.総被検者数31名を歯周病の重症度分類に準じて3群に分類すると,PPD< 4mmの軽度歯周病群(slight periodontitis, health group:SLP群) は5名 ,4mm≦PPD<6mmの中等度歯周病群(moderate periodontitis group:MOP群) は16名,PPD≧6mmの重度歯周病群(severe periodontitis group:SEP群) は10名であった.PPDと歯周病原細菌検査キット (BML社,東京)で測定した総細菌数との関連性を検討したところ,総細菌数はPPDの有意な関連因子で,SLP群(3.3±0.6)とMOP群(4.3±0.9)で有意差を認め(P=0.037),さらにSLP群とSEP群(4.9±0.6)で有意差を認めた(P=0.0021).また,総細菌数とFTIR分析(領域1/領域2)とBOPの3項目の相関に関しては,総細菌数とFTIR分析値に有意な相関関係を認めた(P=0.0171,R2=0.181).さらに,PPDの3群間におけるFTIR分析値において,SLP群(0.164±0.00774)とSEP群(0.119±0.0275)で有意差が認められた(P=0.0273).これらの結果により,呼気からの歯周疾患の検出の可能性を示唆することができた.また,このFTIRによる呼気分析では赤外吸光スペクトルの多次元での検討により,更なる高感度化や特異性の向上が期待できると思われる.
  • 傍田 彩也子, 成戸 史絵, 田中 大介
    2023 年 83 巻 3 号 p. 221-231
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation:OD)では,日常生活の活動量の低下により体力が低下し,自律神経機能・身体機能が悪化し,さらに活動量が低下するというデコンディショニングの形成が症状の増悪に繋がることが指摘されている.今回,体力の指標として握力に注目し,デコンディショニングが形成されるリスクを把握するため,ODの病態と握力との関係を検討した.対象は2019年6月から12月までAクリニックをODで受診し握力測定した51名(14.7±1.1歳).握力とODの診断,肥満度,Qestionnaire for triage and assessment with 30items(QTA30)との関係を検討した.握力の平均SDスコアは−0.8±0.7SD,身体的重症度は重症64.7%,中等症9.8%,軽症9.8%,判定保留15.7%,肥満度は−6.7±11.7%,QTA30で要配慮域の比率は総得点90.2%,身体症状90.2%,抑うつ症状66.7%,自己効力感58.8%,不安症状80.4%,家族機能25.5%だった.握力と相関したのは肥満度(r=0.407,p=0.004),QTA30の総得点(r=−0.486,p<0.001)・身体症状(r=−0.480,p<0.001)・抑うつ症状(r=−0.402,p=0.003)・不安症状(r=−0.412,p=0.003)で,重症群の握力は軽症群より低かった(p=0.024).有意水準は全てp<0.05とした.【考察】OD患者で肥満度が低い,身体的重症度が高い,QTA30の総得点・身体症状・抑うつ症状・不安症状の得点が高い場合は体力低下の可能性が示唆され,握力の計測はOD患者におけるデコンディショニングを把握し,体力をサポートするのに有用と思われた.
症例報告
  • 東 みなみ, 髙木 俊敬, 岡田 祐樹, 大川 恵, 本多 愛子, 渡邊 優, 水野 克己
    2023 年 83 巻 3 号 p. 232-239
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    小児多系統炎症性症候群(MIS-C)がSARS-CoV-2 PCR,抗原陰性かつN抗体陽性で無症候性コロナウイルス感染症2019(COVID-19)の児に生じた本邦初の症例を報告する.症例は5歳女児.入院1か月前にCOVID-19の濃厚接触者になったが,無症状で1回施行したPCR検査も陰性であった.3日前より頸部痛と38℃の発熱が出現し入院となった.入院後に眼球結膜充血以外の川崎病主要症状が出現したため,各種検査と合わせて川崎病を疑いガンマグロブリン,アスピリンで治療を開始した.その後,第6病日から血圧低下と不穏や異常行動を認め,CRP 22.4mg/dlと上昇したため,MIS-Cを疑いインフリキシマブ,ウリナスタチンも追加投与した.第9病日に解熱,第11病日に症状が消失し,第20病日に明らかな合併症なく退院した.第19病日の採血でSARS-CoV-2 N抗体が検出され,MIS-Cと診断した.MIS-Cの合併症や長期予後は川崎病とは異なるため,COVID-19感染者や濃厚接触者に川崎病を疑う症状が出現した場合はMIS-Cの発症の可能性を考慮すべきである.今後は本邦での症例を集積し,MIS-Cに関する予後の解明を行うことが重要である.
第388回昭和大学学士会例会(保健医療学部会主催)
第389回昭和大学学士会例会(アーツ・アンド・サイエンス部会主催)
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