近年,口腔内臭気を用いて,非侵襲で歯周疾患の程度を想定する方法が注目されている.そこで今回,歯周疾患の患者の歯周ポケット測定前の呼気をフーリエ変換赤外分光光度計(Fourier Transform Infrared Spectroscopy:FTIR)分析し,歯周ポケットの深さ(Probing pocket depth:PPD)と,歯周ポケット内での総細菌数(対数),歯周ポケットからの出血部位の割合(Bleeding On Probing:BOP)で比較検討し,歯周病との関連について検討を行った.総被検者数31名を歯周病の重症度分類に準じて3群に分類すると,PPD< 4mmの軽度歯周病群(slight periodontitis, health group:SLP群) は5名 ,4mm≦PPD<6mmの中等度歯周病群(moderate periodontitis group:MOP群) は16名,PPD≧6mmの重度歯周病群(severe periodontitis group:SEP群) は10名であった.PPDと歯周病原細菌検査キット (BML社,東京)で測定した総細菌数との関連性を検討したところ,総細菌数はPPDの有意な関連因子で,SLP群(3.3±0.6)とMOP群(4.3±0.9)で有意差を認め(P=0.037),さらにSLP群とSEP群(4.9±0.6)で有意差を認めた(P=0.0021).また,総細菌数とFTIR分析(領域1/領域2)とBOPの3項目の相関に関しては,総細菌数とFTIR分析値に有意な相関関係を認めた(P=0.0171,R2=0.181).さらに,PPDの3群間におけるFTIR分析値において,SLP群(0.164±0.00774)とSEP群(0.119±0.0275)で有意差が認められた(P=0.0273).これらの結果により,呼気からの歯周疾患の検出の可能性を示唆することができた.また,このFTIRによる呼気分析では赤外吸光スペクトルの多次元での検討により,更なる高感度化や特異性の向上が期待できると思われる.
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