昭和学士会雑誌
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原著
人工膝関節全置換術後の深部静脈血栓症に対する早期理学療法介入の有用性
大橋 夏美小西 正浩仲保 徹
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2024 年 84 巻 2 号 p. 133-140

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抄録
深部静脈血栓症(以下DVT)は人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty:以下TKA)術後の合併症として発生頻度が高く,肺塞栓症(以下PE)を引き起こし,重篤な症状を来す事もある為,予防の重要性が指摘されている.近年,術後早期の理学療法介入によりDVTが減少したとの報告が散見されているが,本邦での報告は未だ少ない.当院では2017年よりDVT・PE予防として手術当日からの早期理学療法介入を実施している.本研究は,TKA手術当日の理学療法介入によるDVT予防に対する有用性を検討する事とDVT発症に関与すると思われる背景因子の検討を行う事を目的とする.2017年から2021年までに昭和大学藤が丘病院にてTKAを施行された319例を対象とし,患者カルテから患者背景,手術情報,手術当日の理学療法介入の有無,術後の超音波画像診断により下肢DVTの有無を抽出し,DVT発生の有無を理学療法介入群と非介入群で比較し,さらにDVT発生に関与する因子の検討を行った.結果は,片側TKAのDVT発生率は介入群が有意に低値を示した.両側TKAにおいても介入群が有意に低値を示した.またロジスティック回帰分析によりDVT発生因子として当日リハビリ介入の有無と性別が抽出された.手術後のDVTの多くは術直後から翌日までに形成されていると報告されており,術後不動となる時間に理学療法介入を行うことによって滞った血流を改善し,血栓形成の予防につながった事が示唆された.
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