昭和学士会雑誌
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84 巻, 2 号
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講演
原著
  • 本寺 哲一, 藤井 隆成, 安田 光慶, 大山 伸雄, 喜瀬 広亮, 加藤 真理子, 渡邊 裕之, 加藤 京一
    2024 年 84 巻 2 号 p. 121-132
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/17
    ジャーナル フリー
    単心室血行動態を有する先天性心疾患の手術にフォンタン手術があり,乳び胸,蛋白漏出性胃腸症(protein losing enteropathy:PLE)などのリンパ管障害があり,リンパ管の形態異常が影響しているといわれている.リンパ管の画像評価の一つに侵襲度の低い非造影MR lymphangiography(MRL)がある.当院では非造影MRLを施行してきたが,リンパ管は細く,描出困難であるため,リンパ管の可視化は難易度が高い.MRLのように難易度が高いMRI検査の場合,検査中に撮像条件を調整しながら最適な画像を臨床に提供することが一般的である.当院で施行した13症例から撮像条件の一つであるecho time(TE)により,リンパ管や周囲組織の描出能が変化することを経験した.本研究では後方視的にMRLにおける適切な撮像条件を導出するために,TEの値を検討した.検討方法は,異なるTEで撮像された13症例,37の撮像画像からリンパ管と周囲組織の信号強度(signal intensity:SI)を測定し,リンパ管と周囲組織の信号強度(signal intensity ratio:SIR)を算出した.その結果,TE 650msが最も高値を示しており,周囲組織の信号が抑制でき,リンパ管を強調できる撮像条件であった.また,今回TEを350msに設定することで胸管から頸静脈への合流などリンパ管と周囲組織との解剖学的情報が明瞭に把握でき,臨床上有用性が高いことも把握できた.統計学的解析では,各TE間でリンパ管のSIおよび周囲組織のSIに有意差は認めなかったが,SIRがTE 350msとTE 850ms,TE 350msと1,000ms,TE 450msと850ms,TE 450msと1,000ms,TE 550msと1,000ms,TE 650msと850ms,TE 650msと1,000msで有意差を認めた.今後は,症例数をかさねていくことで,さらにTEの最適化をしていきたいと考えている.
  • 大橋 夏美, 小西 正浩, 仲保 徹
    2024 年 84 巻 2 号 p. 133-140
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/17
    ジャーナル フリー
    深部静脈血栓症(以下DVT)は人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty:以下TKA)術後の合併症として発生頻度が高く,肺塞栓症(以下PE)を引き起こし,重篤な症状を来す事もある為,予防の重要性が指摘されている.近年,術後早期の理学療法介入によりDVTが減少したとの報告が散見されているが,本邦での報告は未だ少ない.当院では2017年よりDVT・PE予防として手術当日からの早期理学療法介入を実施している.本研究は,TKA手術当日の理学療法介入によるDVT予防に対する有用性を検討する事とDVT発症に関与すると思われる背景因子の検討を行う事を目的とする.2017年から2021年までに昭和大学藤が丘病院にてTKAを施行された319例を対象とし,患者カルテから患者背景,手術情報,手術当日の理学療法介入の有無,術後の超音波画像診断により下肢DVTの有無を抽出し,DVT発生の有無を理学療法介入群と非介入群で比較し,さらにDVT発生に関与する因子の検討を行った.結果は,片側TKAのDVT発生率は介入群が有意に低値を示した.両側TKAにおいても介入群が有意に低値を示した.またロジスティック回帰分析によりDVT発生因子として当日リハビリ介入の有無と性別が抽出された.手術後のDVTの多くは術直後から翌日までに形成されていると報告されており,術後不動となる時間に理学療法介入を行うことによって滞った血流を改善し,血栓形成の予防につながった事が示唆された.
  • 福田 貴巳佳, 髙木 信介, 松浦 聡司, 境 直隆, 沖野 尚秀, 西村 怜, 大久保 文雄, 門松 香一
    2024 年 84 巻 2 号 p. 141-147
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/17
    ジャーナル フリー
    唇顎口蓋裂患者は,複数回にわたり手術および歯科治療を必要とするため,経時的な口腔内形態の記録は,治療の検討に重要な役割を果たす.今回,われわれは,唇顎口蓋裂患者の口腔内に対し,初回手術前に印象材を用いた従来の印象採得と口腔内スキャナー「TRIOSⓇ3」(3Shape, Denmark)を用いた光学印象採得を行った.印象材を用い採得した印象から上顎歯槽模型を,光学印象データからデジタル模型をそれぞれ作製した.それぞれの模型の距離測定を行い測定値の差を評価し,唇顎口蓋裂患者において従来の印象採得と比較し光学印象採得の妥当性を検討した.2019年10月から2021年2月に昭和大学藤が丘病院形成外科で唇顎口蓋裂の初回手術を予定した患者40名を対象とした.測定部位は左右の歯槽先端部間距離,後方披裂縁点間距離,歯槽頂から口蓋最深点間距離の3か所とした.左右の歯槽先端部間距離,後方披裂縁点間距離において両者の測定値に統計学的有意差はなかった.歯槽頂から口蓋最深点間距離においては,光学印象の方が高い値となり,有意差を認めた.歯槽先端部間距離や後方披裂縁点間距離のような鉛直成分をもたない深度のない部位においては,光学印象採得は,従来の印象採得に遜色なく距離測定可能であるが,歯槽頂から口蓋最深点間距離のような鉛直成分をもち深度が強く関係し,かつ長い距離間においては不向きであることが示唆される.
  • 先山 耕史, 内山 裕史, 高橋 俊行, 中井 雄一, 加藤 京一
    2024 年 84 巻 2 号 p. 148-155
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/17
    ジャーナル フリー
    頭部IVRの急速な進歩に伴い,さまざまな種類の頭蓋内ステントが使用されており,また巨大動脈瘤に対してのみ可能なフローダイバーターステント治療(FD)は,5mm以上の動脈瘤に適応が広がり,今後FD治療の増加が予測される.FD治療においては,留置したステントの血管壁への圧着が重要であり,正確な血管径の計測によるステントサイズの選択が治療成功の鍵とされている.血管計測を行う際には,3DRA画像により,Stent留置部の血管構築を正確に把握した上で,3次元再構成画像,digital subtraction angiography(DSA)の2次元画像をもとに,計測を行い,留置部の血管径,想定留置長から使用するデバイスの径と長さが選択されている.本研究では,3DRA画像における再構成関数Reconstruction Filter(RF)を変化させた際の脳動脈瘤径および血管径の計測に関する影響について,DSAでの2D画像計測も含めて検討を行った.計測を行う際には,2D計測では計測対象をアイソセンターに配置撮影を行うことで測定誤差が少なくなる.3DRAでの3D計測は,過大評価の傾向を示すため,高周波数成分を強調するような再構成関数で再構成を行い,また閾値を変更するなど画像の鮮鋭化を行うことで測定誤差を小さくすることが可能となる.
症例報告
  • 金子 佳右, 鈴木 慎太郎, 能條 眞, 本間 哲也, 松永 智宏, 宇野 知輝, 内田 嘉隆, 大田 進, 田中 明彦, 相良 博典
    2024 年 84 巻 2 号 p. 156-162
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/17
    ジャーナル フリー
    症例は16歳男子.乳幼児期からアトピー性皮膚炎と食物アレルギーの既往がある.食物アレルギーの継続診療のため紹介受診した際に自覚症状や他覚所見を欠いていたが,偶発的にAST 36IU/L,ALT 77IU/Lと肝障害を指摘された.腹部超音波検査や腹部単純CTでは有意な異常所見を認めなかった.詳細な問診より,1年前から「成長促進」をうたった市販のサプリメントを毎日飲んでいた.患者の持参したサプリメントで行ったプリックテストは陰性で,含有成分のうち過去に肝障害の報告があるスピルリナでリンパ球刺激試験を施行したところ,高いSI(stimulation index)値(27.5),最大反応値(3,409cpm)を示した.薬物性肝障害の診断基準に基づくスコアリングで7点のため,スピルリナ含有のサプリメントによって誘起された早期のアレルギー性肝障害と診断した.以後,同商品や類似した成分の商品の購買・摂取を止めるように指導し,肝障害は速やかに改善した.スピルリナによる肝障害の報告はいずれも日本人で,アレルギー性肝障害は本症例が初めてである.サプリメントや健康食品の販売サイトや包装には健康被害に関する記載が乏しいこともあり,消費者は購入の際に留意する必要である.
第70回昭和大学学士会総会
第395回昭和大学学士会例会(薬学部会主催)
第396回昭和大学学士会例会(医学部会主催)
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