単心室血行動態を有する先天性心疾患の手術にフォンタン手術があり,乳び胸,蛋白漏出性胃腸症(protein losing enteropathy:PLE)などのリンパ管障害があり,リンパ管の形態異常が影響しているといわれている.リンパ管の画像評価の一つに侵襲度の低い非造影MR lymphangiography(MRL)がある.当院では非造影MRLを施行してきたが,リンパ管は細く,描出困難であるため,リンパ管の可視化は難易度が高い.MRLのように難易度が高いMRI検査の場合,検査中に撮像条件を調整しながら最適な画像を臨床に提供することが一般的である.当院で施行した13症例から撮像条件の一つであるecho time(TE)により,リンパ管や周囲組織の描出能が変化することを経験した.本研究では後方視的にMRLにおける適切な撮像条件を導出するために,TEの値を検討した.検討方法は,異なるTEで撮像された13症例,37の撮像画像からリンパ管と周囲組織の信号強度(signal intensity:SI)を測定し,リンパ管と周囲組織の信号強度(signal intensity ratio:SIR)を算出した.その結果,TE 650msが最も高値を示しており,周囲組織の信号が抑制でき,リンパ管を強調できる撮像条件であった.また,今回TEを350msに設定することで胸管から頸静脈への合流などリンパ管と周囲組織との解剖学的情報が明瞭に把握でき,臨床上有用性が高いことも把握できた.統計学的解析では,各TE間でリンパ管のSIおよび周囲組織のSIに有意差は認めなかったが,SIRがTE 350msとTE 850ms,TE 350msと1,000ms,TE 450msと850ms,TE 450msと1,000ms,TE 550msと1,000ms,TE 650msと850ms,TE 650msと1,000msで有意差を認めた.今後は,症例数をかさねていくことで,さらにTEの最適化をしていきたいと考えている.
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