昭和学士会雑誌
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症例報告
下顎骨骨髄炎を契機に診断に至ったSAPHO症候群の1例
伊藤 美莉佐藤 仁金田一 和香渡邊 匡崇趙 柏欽代田 達夫
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2024 年 84 巻 6 号 p. 486-491

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抄録
SAPHO症候群は無菌性の炎症性病変を生じ,その特徴的な症状であるSynovitis(滑膜炎),Acne(ざ瘡),Pustulosis(膿疱症),Hyperostosis(骨過形成症),Osteomyelitis(骨髄炎)の頭文字から命名された疾患である.本疾患は診断に苦慮することが多く,治療法も確立されていないのが現状である.今回,下顎骨骨髄炎を契機にSAPHO症候群の診断に至った1例を経験したので報告する.症例は50歳,女性.左側下顎臼歯部の疼痛が抜歯などの処置が行われるも軽快せず,近在歯科医院を受診したところ精査・加療目的に当科を紹介され受診した.既往歴に掌蹠膿疱症と2型糖尿病があり,当科初診時には,左側頰部の腫脹と圧痛が認められ,開口障害が認められた.口腔内所見としては欠損部である左側下顎臼歯部の粘膜に発赤と腫脹,圧痛を認めたが,波動は触知せず,瘻孔形成も認められなかった.パノラマX線画像およびCT画像において左側下顎骨体部の硬化性変化が認められた.核医学検査では,左側下顎骨に99mTc-HMDPの集積が認められ,胸鎖・胸肋関節への集積,いわゆるBull’s head signが認められた.既往歴および以上の臨床所見からSAPHO症候群と診断し下顎骨骨髄炎に対しては非ステロイド性抗炎症薬の投与を行った.掌蹠膿疱症に対しては皮膚科にてヒト型抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤の投与が行われ,その後症状の再燃は18か月間認められておらず良好に経過している.今後も症状再燃の可能性があるため慎重な経過観察を継続する予定である.
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