抄録
家族性大腸腺腫症(Familial adenomatous polyposis: FAP)は大腸に腺腫が多発する常染色体優性遺伝性疾患である.デスモイド腫瘍(Desmoid tumor: DT)はFAP 患者の腹壁,腹腔内(腸間膜・後腹膜)に好発する大腸外腫瘍性病変としてよく知られており, FAP 患者のquality of life を損なうだけでなく,生命予後にもしばしば重大な影響を与える.DT のnatural course には不明な点が多く,データの蓄積も不十分であり,現在までに十分なエビデンスに基づく治療法は確立されていない.本稿では,FAP に合併するDT の概要,診断,治療について概説し,将来の標準治療の確立を念頭に置いた重症度分類を提案した.