遺伝性腫瘍
Online ISSN : 2435-6808
特集
ゲノム医療におけるphysician-scientistの役割
衣斐 寛倫
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 21 巻 4 号 p. 96-100

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抄録

 近年、遺伝子解析やAIなどの技術開発が進み、基礎研究の内容が臨床展開されるスピードが加速する一方、臨床現場で要求される基礎生物学の知識も大幅に増加している。Physician-scientistとは臨床を行いながら研究(基礎研究もしくはトランスレーショナルリサーチを指すことが多い)も行う人を指す言葉である。2年前より保険診療として開始された遺伝子パネル検査は、100~300程度の遺伝子について同時に評価し、同定された遺伝子異常をもとにした新たな治療の提供を目的とする。しかしながら、actionableな異常が同定され治療につながる割合は現在のところ10%以下であり、9割の患者は検査の恩恵を受けられていない。このため、scientistとして同定される遺伝子変異に対し新たな治療法を開発することが求められている。また、パネル検査で同定される遺伝子異常は、変異の部位や臓器によって機能や病的意義が異なることがあり、現時点での臨床開発の現状も踏まえてactionableであるかの判断を行う役割も期待される。このようにphysician-scientistは、基礎研究と実臨床をつなぐ役割が期待される。

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© 2022 一般社団法人日本遺伝性腫瘍学会
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