遺伝性腫瘍が強く疑われるが,遺伝学的検査を実施しても確定診断に至らない症例を経験することは少なくないが,近年の遺伝子解析技術の飛躍的な進歩により,こうした症例もその後確定診断ができるようになってきた.このわずかな時間的あるいは技術的な差によって,診断できるはずの症例が確定診断に至らず取り残されることがないように対応していくことはきわめて重要である.しかし,どの症例に対して新たな検査を追加するかを適切に判断することは困難なことが多い.今回私たちは,EPCAM遺伝子の部分欠失によりLynch症候群と診断された家系を通して,ご家族の方と信頼関係を築き,根気強く家系調査を行うことが,こうした課題に対する効果的で迅速な解決法の一つになり得ることを経験したので,診断に至る過程での家族の心情の違いや変化も含め報告する.