2020年4月,遺伝性乳癌卵巣癌(hereditary breast and ovarian cancer;HBOC)診断を目的としたBRCA1/2遺伝学的検査が保険収載され,乳癌患者の術式選択等治療方針に活用されている.しかしながら,2020年4月以前に乳癌と診断された患者においてもHBOCを疑う症例が存在する.症例は,すでに乳房温存手術,術後化学療法および放射線治療を完遂しており,BRCA1/2遺伝学的検査が保険収載されたことを契機に遺伝子検査を受け,HBOCと判明した.残存乳房および対側乳房へのマネジメントについて検討を要した1例を報告する.
わが国では,2018年7月に生殖細胞系列のBRCA遺伝子への治療薬であるオラパリブ(リムパーザ®)が乳癌患者に適応となり,オラパリブの適応を判定するためのコンパニオン診断であるBRACAnalysis CDx®診断システム(BRACAnalysis)が開始となった.本稿では,遺伝性乳癌卵巣癌症候群(hereditary breast and ovarian cancer syndrome;HBOC)の遺伝カウンセリング実績のある482床のA総合病院におけるBRACAnalysis実装までのプロセスについて,がん看護専門看護師(certified nurse specialist in cancer nursing;OCNS)のチャレンジとがんゲノム医療への課題と展望を報告する.