遺伝性腫瘍
Online ISSN : 2435-6808
臨床経験
地方におけるがんゲノム医療の現状と課題~地方がんゲノム医療連携病院での経験~
高畠 大典
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ジャーナル オープンアクセス

2023 年 23 巻 2 号 p. 67-72

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抄録

 厚生労働省のがん対策推進基本計画に基づき,ほぼすべての都道府県で保険診療下でのがんゲノム医療が提供可能な体制が整いつつあるが,現実にはさまざまな要因で地域格差が存在する.地方のがんゲノム医療連携病院では人材不足,治験へのアクセス困難,地域でのがんゲノム医療に対する理解の低迷,院内スタッフの関心の薄さといった課題に悩みつつ,がんゲノム医療の提供を続けている.当院は2019年4月からがんゲノム医療連携病院に加わり現在までに44例のがんゲノムプロファイリング検査を行った.このうち治療薬に到達した症例は4例で,治療到達率は9%であるが,消化器癌,肺癌,乳癌などのメジャーながん種で治療に到達した症例はごくまれである.治療到達率が上昇しない要因はactionableなバリアント自体がいまだ少ないことに加え,前述の課題があげられるが,これらの課題の解決に直ちに有効な処方箋は今のところ存在しない.しかしながら今後,がんゲノム医療ががん診療の中心に据えられることを見据えて地方においても症例の蓄積,提供体制の改善を模索し続ける姿勢が重要と考える.

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© 2023 一般社団法人日本遺伝性腫瘍学会
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