2024 年 24 巻 1 号 p. 86-90
HBOC診療の一部が保険収載されて以降,乳癌診療の中で遺伝医療の機会が急増しており,当院におけるBRCA1/2病的バリアント(PV)陽性乳癌患者におけるリスク低減手術の現状について報告する.対象は当院で乳癌手術を施行したPV陽性の10例で,遺伝カウンセリングにおいてリスク低減手術について検討した.リスク低減乳房切除術(RRM),リスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)の実施状況は,RRM+RRSO 4例,RRMのみ1例,RRSOのみ2例であった.RRMを希望した患者のうち1例は腹膜癌術後経過観察中,1例は乳癌骨転移化学療法中という背景であった.さまざまな背景をもつ乳癌患者の意思決定において,とくに原疾患がハイリスクの患者の場合,病状と手術侵襲を考慮し慎重に適応を決定する必要があるため,多職種による遺伝カウンセリングや各科連携の体制構築が重要であると考えられた.